「先生!今日は卒業生の様子を見にいくって言うからついて来ちゃいましたけど、どういう卒業生なんですか??」
「うむ。ヤドキング君と言ってな。ワシが若い頃世話になった、ヤドランというやつの一族じゃ。」
「ヤドランさんなら有名ですね。サポート界では彼を知らない者はモグリとも言われています(メガネクイッ)」
「知ってる知ってる!あたしと同じ電磁波が使えるんだよね〜」
「ヤドキング君も、うちに居た時はすごく優秀な生徒だったんだ。」
「やっぱり、血は争えないというわけですね。」
「そんな優秀な先輩の試合見るの、楽しみだーーー」
「今日ついて来たのはハクリューちゃんとイワーク君、ヨルノズク君、ピジョット君だね。みんな、はぐれないようにね。」

予備校物語
第37話 〜校長の一大決心・前篇〜

「みんな・・・実はな、今日ワシが見に行くということは、ヤドキング君本人には言っておらんのじゃ。」
「そう、校長はね、あくまで先生たちが見ていないところで、彼がどんな活躍をしているのが、コッソリ見に行きたいって言うんだ」
「なるほど。ではボクたちも、バレないようにこっそり影から見ていたほうがいいというわけですね。」
「いや、君たちはヤドキング君と面識は無いじゃろう。普通に観戦しておっていいぞ」
「じゃ、お言葉に甘えて」
「それからな、実は今日、こっそりワシの息子を送り込んであるのじゃ・・・」
「ほう、先生の息子さん!」
「校長の息子さんも、先生をやっていてね。でもそのことをヤドキング君は知らないから、
  コーチとしてひっそりと、面倒を見させてるんだって」
「どんな人なんだろうーー」
「ふふ、校長そっくりだよ。」
「へー。校長先生とそっくりってことは、イケメンなんだろうな〜〜」
「コ、コラぁ//// 大人をからかうのはぁ//// よくないぞぉぉ//// ンッヒヒヒッヒヒィィwwwwwwwwwww」
「今日は毒舌ツッコミ役いませんので、そこのところ、よろしく。」
「あっ!いたいた!校長、やってますよヤドキング君!」



「フゥー・・・。惜しいな。まだまだだ。」
「(すごい!エースとしてがんばってるんだ!キリンリキ君と同じですね校長)」
「(うむ・・・しかも、大幅にキャラが変わっておる・・・。生徒だったころは、ぼけーっとしておったのに、
  目がキリッとしておる・・・あれは戦う者の眼だ。次の試合、ヤツは必ずやりおるぞ!!)」
「(あっ!電磁波からの鈍い・・・ウチのパパといっしょだ!すごーい♪)」
「(特殊耐久でボクを上回るとは。しかも、エスパー耐性・・・さすがはヤドランの一族なだけはある。)」

「フゥー・・・。一族一族って、うるさいんだよねー。」
「(ギクッ!!)」
「(ま、まさか、ヨルノズク君の心の声が聞こえたのか!?)」
「僕は必ずやるぞ・・・。ヤドランには出来ないことを・・・!!」
「(ヤドキング君、在学時代はとても優秀でしたけど、結局ヤドランとの差別化が出来たかというと怪しかったですもんね。)」
「(フフッ、ワシの目論見通りじゃ・・・まぁ見ておれ。ヤツはこれから、凄まじい試合をしてくれるぞ!ワシには分かる。)」
「(ほえー。楽しみ)」
「(それにしても、Lv.54とLv.51か・・・。面白いレベル編成をしておるのう。これはワシには考え付かなかった)」



「ッッッッシャアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」
「(おおおおお!!!ヤドキング君が吼えた!!あんなヤドキング君、見たこと無い・・!!)」
「(な、なんだこの素晴らしい試合は・・・!!?!!)」
「ブラボーーーー!!!!」
「!?」
「あっ!ちょっ、イワークくん!」
「おいおい、こんなところで大きな声を・・・」
「誰ですか、あなたたちは」
「あいや、その・・・、実は、僕たちガラガラ予備校の生徒なんです」
「おお!そうだったのか。」
「はいっ!ご、ごめんなさい、その、、卒業した先輩がこのあたりでがんばっていると噂に聞いたもので、、、」
「ハハハ、そういうことか。どうして謝るんだい。いいんだよ、見てくれれば」
「(す、すごい・・・彼、完全にキャラ変わりましたね、校長・・・)」
「(うむ・・・、ワシの目論見通りではあったが、ここまで変わるとは・・・)」
「先生たちは?来ていないの?」
「あっ、、そ、その、今日は予備校が休みで、僕たちで先生に内緒で勝手に来てしまったんです!」
「(ピジョットくん、ナイスフォロー!)」
「ハハ、なるほどね。大丈夫だよ。いろんな試合を見学するというのは実にいいことだ。
  帰ったら先生たちにも報告すると良いよ。きっと、いいことをした、って褒めてくれるさ」
「でも、今の試合、すごかったなあー」
「ボクも感動しました・・・敢えてアンコールされ続けて自分のPPを切らすなんて。こんな戦術、見たこと無い・・・」
「僕はね、予備校を卒業してから、ずっと考え続けていたんだ。
  自分にしか出来ないこと。ヤドランには出来ないことって、何なのか、ってね。
  予備校では確かに、先生たちには良い指導をしてもらったし、良い経験もした。
  だけど実は・・・卒業しても良いと言われたとき、僕は納得していなかったんだ・・・。
  予備校で、ヤドランと大して差別化できた試合をしたわけでもなかったからね。
  それに、周りはみんな僕のことを、なにかにつけてすぐ、ヤドランの一族だとかって。
  そういうやつらを、見返してやりたかったのさ。僕はヤドキングであって、ヤドランとは違うんだ、ってね。」
「なるほど・・・予備校に対してそんな苦い思い出が。」
「別に先生方を恨んでいるわけではない。けど・・・正直、満足はできなかったね。
  だから僕は、みんなを見返してやろうと思って、卒業してから必死に考え抜いたのさ。
  その結果を今日は出せた!今はすごくいい気分だよ」
「(しかし校長、ヤドキング君をエースに立たせて、息子さんを低レベルにして使わせるとは・・・流石です)」
「(彼は頭がいい。だから、どうすれば自分が自分で在る意味を見い出せるのか、
  それを自分の頭で考えて、答えを導き出すことが出来るとワシは確信しておった。
  その結果が今じゃ。ワシは、ほんのお手伝いをしたまでじゃて)」

つづく