第1話 〜不気味な夜〜
「まだお前との一騎討ちは果たしてねぇのに…」
うぉっちの墓を前に、雷神掌は悔しそうに、しかし仕方無さそうな苦笑を浮かべながら呟く。
「…そうか。そういえば俺が繋ぎを出したとき、2人は腕試しをしていたんだ…」
伊達が申し訳無さそうに俯く。
「今思い返せばあの程度の者どもは俺が一人で片づけてしまえば良かったんだ。。」
悪いのは俺だ、と言いたげに伊達に続くのは隊長;わたちゃん。
「あ、いやそんな。。。結果的に今回の事件はうぉっち無しじゃ解決出来なかったわけですし」
慌てて雷神掌がフォローする。
わたちゃん隊長、雷神掌、伊達じゃない!!に加え、龍御、みみみー、TRYSTEY。
新しいわたちゃん軍の隊員たちは、
うぉっち、だいぴん、赤毛のロイ、民Eの兄の墓参りに来ていた。
わたちゃんは、最終的に改心してくれたリッキー、駆逐や、駆逐の妻の墓も立ててもらったが、
「あれはあのお方(DOTTO)の命令を聞きたくないリッキーや駆逐がとった仕方の無い行動で、
別に貴様らの味方になったわけではない。あいつらは今でも俺の手下だ」
という言い分で、雪春に持って行かれてしまった。
みみ「あの剣士、名前ぐらい聞いときゃ良かった…。」
わた「あんな関係無い民の命まで……奴は本当に悪心の塊だった…。」
雷神「はっ、関係無い民と言えば、、、あそこは? 死の領域は一体どうなったんすか??」
わた「ああ、調べてみたが、奴が消滅してから、あそこもただの穴と化していたよ。」
龍御「で、その穴は…」
わた「遺体はすべて別の場所に埋葬してもらった。
穴は気味が悪いから、埋めてもらうことにしたよ」
みみ「なるほど。。」
TRY「それからコイツだぜ…最後まで正体がよく分からなかった」
雷神「だいぴんか…。一体過去に何をしてて、どうして俺らに加勢してくれたんだろう」
伊達「実を言うと俺は、最初あいつを疑っていたんだ。。」
TRY「確かに口調が怪しかった」
龍御「だが最後には仲間を守って……カッコ良すぎるぜ全く」
わた「自らのことを何も明かさずにな…」
雷神「しかし可哀想なのは赤毛だよ。実の兄貴があんな…
俺だったらショックで寝込んぢまいそうだ」
伊達「まぁ何年か前から知っていたみたいだからな。
今回は並大抵でない覚悟があったのかも知れない」
龍御「だが考えてみりゃ、館が爆破されたとき、
DOTTOが消滅したと同時に赤毛も死んだわけだよな」
伊達「ああ、なるほど…最期は兄弟一緒ってわけか」
みみ「進んだ道は正反対だったのに、か…」
わた「仮にも実の兄弟だ。もしかしたら、初めから決まっていた運命だったのかも知れない。」
龍御「ったく皮肉なもんだ。。。」
事件の解決後、Cigaretteとコブロンはまた放浪の旅を始めた。
コブロンについては、わたちゃん軍とこんなやりとりがあった。
雷神「なぁコブロン、やっぱりわたちゃん軍に戻ってこな…」
コブ「悪いがその気は無いよ。
今回の旅でやっぱり自分は集団行動に向かないことを改めて思い知らされた。」
TRY「何言ってんだ。俺なんかよりずっと戦力になるし今回も活躍してたじゃないか」
コブ「わたちゃん軍にはかつての俺のポジションに龍御が入った。
これで俺の隊員としての役割は終えたんだよ」
龍御「まさか、俺のせいで…」
コブ「おいおい勘違いしてもらっては困る。もう安心して軍を任せられるから、
俺は安心して旅に出れるってことだよ」
雷神「だがやっぱりお前の実力は…」
わた「そのぐらいにしておけ。コブロンが放浪の旅をしたいと言ってるんだ。
好きなようにさせてやればいいじゃないか」
雷神「………。」
ただ、先日ヤッホーから繋ぎが入り、
彼はコブロンと一緒に旅をして修行を積むことにしたらしい。
凍神掌は、自分の就いている仕事に戻った(詳しくは明かされていない)。
そしてグリだけは、何故かぽっつりと消息を絶ってしまった。
ところで、今彼らが過ごしている街は近くに海があり、
それを隔てて"摩仁島"という島がある。
クラークスは今、そこで経済活動を行っている。
わたちゃん軍の隊員も、所用で何度か街と島とを往復していた。
そして在る日。雷神掌、龍御、みみみーの3人が島で一泊してくるとの知らせを受け、
残る3人だけの小屋は物静かさを保っていた。
ただひとつ、小屋の外でしとしとと降る雨音だけが響き渡っていた。
陽が沈むと次第に雨脚は強まった。
「パリーン」
TRYSTEYが手を滑らせ、皿を割ってしまった。と同時に、
「バキッ」
伊達が手入れをしていた道具が折れてしまった。
静寂に包まれていた小屋が追い討ちをかけるように静まり返った。
TRY「まじかよ…」
伊達「不気味だな…」
わたちゃん隊長は既に別室で眠りに就いていた。
TRY「何かが…………… ………起きそうだ」
伊達「ああ、俺も胸騒ぎがする」
TRY「ひょっとすると…、この雨の中、足音を忍ばせて奴らがやって来るとか……!」
伊達「雪春たちか…、在り得る。」
伊達は窓の外から様子を伺った。
伊達「…今夜は徹夜で警備した方が良さそうだ」
TRY「昼には雷さん達が帰って来る。それまでだな。」
2人は注意力を研ぎ澄ませ、一晩中小屋を厳重に見回っていた。
がしかし、結局何も起こらないまま、陽が昇った。わたちゃんが起きてきた。
わた「2人とも起きていたのか??」
2人は、夕べのことをわたちゃんに話した。
わた「はははっ、なんだ、そんなことか。」
伊達「いやしかし、あれはどう考えても何かの前触れとしか…」
わた「考え過ぎだよ。何かって、一体何が起きるんだ?」
伊達「だから、その…、雪春達が寝込みを襲って…」
わた「奴らは来ないよ…。」
TRY「どうして分かるんですか?」
わた「気配を感じ取れば、来る時は分かるものだよ………。」
TRY「マジか………隊長にはまだまだ遠く及びませんわ。」
わた「及べ!」
わたちゃんは急に厳しい顔付きになった。
わた「邪念を捨て、精神を安定させ、感覚を研ぎ澄ませるのだ………」
少し躊躇ったのち、TRYは立ち上がって言った。
TRY「ああ……及んでやりますとも!!」
伊達は黙って頷いた。
わた「徹夜で見張りをするのはその時だ。それまでにしっかりと食べて体力を付けるんだ。」
わたちゃんは食卓に座って朝食を食べ始めた。2人もそれに続いた。