わたほうし

相手の素早さを2段階下げる。全く同じ効果を持つ怖い顔に対し、技タイプが異なる他、
命中率がほんの少し低い代わりにPPは40(最大61)と、大幅に優れている。
とは言え、このPPは多過ぎであり、怖い顔のPP10(最大16回)でも十分である場合が多いため、
技の性能としてはこの技は怖い顔に劣りがち。
ただ、命中率も怖い顔が90%なのに対しこちらが85%と、ほとんど大差無いため、
実質的にこの2つの技の性能はどっこいどっこいと言ったところである。
この技と怖い顔を両方覚えるポケモンは存在しないため、相手の素早さを下げたい場合は素直に覚える方を使えば良い。
一応、最大PP61で命中85%なので、期待値としては約52回、敵の素早さを2段階下げられる計算になる。
これは高速移動の最大PP48を上回るため、万が一高速移動とこの技の打ち合いになった場合、
最終的には敵の素早さをダウンさせることが出来る。怖い顔だとPPが足りず、この動きは出来ない。
(そんなことはまず発生しないが…。)
また、相手の素早さを下げる方法としてはもっと一般的には麻痺させるという方法もあるが、
電磁波や蛇睨みと違って無効化される属性が無いという点や、
相手が他の状態異常を受けていても重ねがけ出来て、眠るで回復されないという点で秀でている。

・ワタッコ、デンリュウ
この技を覚えるポケモン。この2系統だけである。
皮肉にも、いずれも相手をダイレクトに麻痺させる技を覚えることが出来るため、
単に素早さサポートをするならば通常はそちらが採用される。
やはり、他の状態異常と重ね掛けするような使い方をしたい場合に採用の余地がある。
一応、ワタッコの痺れ粉と比べるとシンプルに命中率が高いという点、
デンリュウの電磁波と比べると地面ポケモンにも効くという点でも、秀でてはいる。
ワタッコ:眠り粉と重ねがけでサポート

わるあがき

全ての技のPPが切れてしまい、繰り出せる技が無くなった時に、自動的に発動する、いわゆる「通常攻撃」のような技。
その性質ゆえ、全てのポケモンが使うことが出来る技だが、能動的にこの技を「覚える」ことは出来ない。
世代によって仕様が細かく異なるため、この技の金銀における仕様をおさらいすると、
技タイプは一応ノーマルではあるが、属性相性・属性一致ボーナスの影響は受けず、実質的に属性無しの物理攻撃技と見なせる。
威力は50、命中率は第4世代以降は必中のようだが、金銀では普通の命中率100%の技であり、命中率/回避率の影響を受ける。
また、攻撃の反動としてダメージを受けるが、これも第4世代以降とは大きく異なり、
金銀では捨て身タックルや地獄車と同じく、普通に与えたダメージの1/4(小数切り捨て)である。
全ての技のPPが切れた際に発動するものなので、必然的にこの技のPPは実質無限と言える。
拘り系アイテム等が存在しない金銀においては、全ての技のPPが切れた時以外にこの技が発動するようなことは無い。
金縛りで封じた技をアンコールされたような場合でも、「封じられていて技が出せない」という状態になるだけであり、
この技が自動発動することは無い。

第4世代以降と違って、反動ダメージがあまり致命的ではないため、
「この技が発動するようになったら実質負け」というほどではないが、
威力50で反動付きという、決して性能の良い技ではないため、やはり極力この状態にはなりたくない。
そのために「PP戦」という概念が存在し、お互い決定力を出せず膠着状態に陥った場合、
「如何に相手よりも多くターンを稼ぎ、相手に先にPPを切らせるか」という研究も多くされて来た。
自発的な眠るからの「ぐうぐう眠っている」によりターンを稼く、交代によってターンを稼く、
逆に相手には眠るを使わせないようにダメージを与えない、
「痺れて動けない」のターンを与えないように麻痺を極力かけない、
受けに徹する際は、鈍いでなく、PPの多い丸くなるを採用する、
初めから凍結を狙う場合は、冷凍ビームでなく、PPの多い冷凍パンチを採用する・・・などなどがある。
特に、他の世代と比べると圧倒的に耐久力が高い金銀対戦においては、
PP戦というのは切っても切れない関係であり、狙わなくても自然発生し得るため、嫌でも意識せざるを得ないところがある。
2010年代以降の環境では、対戦が高速化したため、PP戦の頻度も低くはなったが、
2000年代の環境においては頻発し、金銀対戦における一種の必修科目のような扱いだったとも言える。
PP戦において気を付けるべき点はこちらの記事にも纏めてあるため、参照されたい。

この技の奥深いところは、金銀においては必ずしも「この技を発動するようになったら負け」とは限らないという点である。
お互い決定力が無く、膠着状態であるということは、威力50の物理攻撃技というのが、時として「決定力」になってしまうことがある。
特に、鈍いを積んで食べ残しを持っているポケモンの発するこの技は強力であり、
相手からしたら防御が上がっている上に食べ残しまで持っているため倒しづらく、
その間に攻撃力が上がったポケモンがこの技を毎ターン連射して来るのである。
しかも、攻撃の反動は食べ残し回復でチャラになってしまう程度である。
そのため、鈍いを積み切ったポケモンのこの技を受け切れずに倒れてしまったら、
そのまま後続のポケモンも牛蒡抜きされてしまい、この技によって3タテが生じてしまうということもあり得る。
したがって、金銀対戦においては基本的に「PP戦に勝てば勝ち」ではなく、
「PPが切れてこの技を発動するようになったらどうなるか」まで考える必要がある。
ここまで考えたくはないかも知れないが、金銀対戦のある種奥深いところのひとつとも言えるだろう。
なお、お互いが影分身を積み切った上に食べ残しを持っているような状態では、
お互いこの攻撃がたまにしか当たらず、それも食べ残しで回復し切ってしまい、
本当に永久的に勝負が付かないという展開も発生し得る。
これがお互いラスト1匹同士のタイマンだとしたら、DRAW判定にするしか無いだろう。

ただし、ここまでの話はほとんど、「ターン制限が無かったら」の話であることには注意が必要。
ターン制限のあるルールでは、この技で永久に殴り続けることは出来ず、いつか判定ターンが来てしまうので、
受け側はそれまでにこの技で倒されなければ、最終ターンの判定に持ち込むことが出来る。
サイクル戦であれば、そもそもPPがまだ残り、この技を発動する前に判定が来ることも決して少なくない。
オフ会においては、基本的にターンを数えることはなく、制限も無い場合がほとんどだが、
その代わりに時間という制限があるため、これもレギュレーションをよく確認しておく必要がある。

・カビゴン
鈍い+眠るを持った岩や鋼ポケモンにガン受けされ続けた果てに、PPが切れてこの技が発動するようになる機会がそれなりにある。
その後に相手のポケモンが決定力を持っていたり、どくどくを持っていたりすれば一方的にカビゴンの負けが決まるが、
相手側もカビゴンへの有効打が無い場合、鈍いで防御力が上がり切って、食べ残しまで持っているカビゴンを倒し切れず、
相手側もいずれPPが切れてしまうということがあり得る。
こうなると、お互いこの技同士で殴り合う勝負となるのだが、この技は属性の影響を受けないため、
岩や鋼ポケモンであっても半減は出来ず、結果的に体力が秀でているカビゴンが打ち勝ってしまうことさえある。
また、ゴーストポケモンでカビゴンを無効化する場合でも同じで、
複数対決ならば滅びの歌で倒したり道連れすることが出来るが、
お互いラス1のタイマンになってしまうと、ゴーストポケモンはカビゴンへの有効打が無いという場合が多い。
この場合、逆にカビゴンはさっさとPPを切らしてしまうことで、
属性相性を無視出来るこの技によってゴーストポケモンを余裕で倒せるようになってしまう。
このように、カビゴンを受けていたはずのポケモンがこの技で倒されてしまっては、
残りもそのまま3タテされる未来が待っているというのは想像に容易い。
したがって、カビゴンをガン受けしてPPを切らすようなことを狙う際には、
カビゴンがこの技を使うようになっても、本当に打ち勝てるか、ということまで考える必要がある。
このことは、こちらの記事でも触れているので、参照されたい。
この技のこういった性能も、一撃無し2000ルールにおけるカビゴンを一強たらしめている要因のひとつであることは間違いない。
なお、PBS環境においては、何故かノーマルポケモンの属性一致ボーナスだけ計算されてしまうため、
余計にカビゴンの打つこの技が強くなっている。
フーディン:お互いこうなった時は食べ残しが絶大な強さを発揮する

・ケンタロス、ガルーラ、ブラッキー、キングドラ、サンダー等
以上のように、この技は金銀においては、それなりに決定力として機能してしまう技であるため、
あろうことか「初めからこの技に頼るつもりで参戦する」という戦術が存在してしまう。
ズバリいずれのポケモンも、「身代わり/影分身/鈍い/眠る@食べ残し」という型を使う。
序盤は敵の大技や宿木のタネを身代わり+食べ残しで守りつつ、影分身+鈍いを全部積み切り、
HPが減って来たら眠るで回復することで倒されないようにして、
全てのPPを切らしたら満を持して、メイン技であるこの技で全抜きを狙うというものである。
「技を5個使えれば良いのに」という妄想は誰しも一度は抱いたことがあると思うが、
ある意味それを実現しているのがこの型であるとも言える。
「闇の世界の○○(ポケモン名)」や「闇型」などと呼ばれており、
これが決してネタではなく、普通に強くて無視出来ないというのが厄介なところである。
例えば、ケンタロスやガルーラは、本来はカビゴンやミルタンクに対して、完全タイマンならば不利であることが多いが、
この型ならば基本的に逆転して、有利と言えるようになる。
また、サンダーですら、この型ならば天敵であるはずのカビゴンやライコウに勝ててしまうことがある。
基本的にどのポケモンにおいても、カビゴンへのタイマン性能が高く、
また身代わりや影分身の影響により大爆発にも強い、といった点で、一定の評価を下さざるを得ないところがある。
吹き飛ばしや滅びの歌などでは退場させられてしまうため、基本的にはラストのタイマン向きであるが、
相手にそのような対策が無い場合は、初めから起点を作って3タテを狙うような動きも出来る。
宿木のタネを食らっても基本不利であるため、最低でもLv.50フシギバナを抜けるポケモンで使われることが多い。
ここに挙げたポケモンの中では、唯一ブラッキーはフシギバナに先手を取られてしまうが、
高レベルで使うことで、身代わりが低レベルカビゴンののしかかりやパルシェンの冷凍ビームを耐えられるというメリットが大きい。
また、いずれのポケモンも、序盤の影分身や鈍いの積み始めは一番不安定であり、
この隙に大技を何度も受けてしまうと、身代わりでも体力が持たなくなり、眠るを使ったら寝ている間に倒されてしまうこともある。
したがって、なるべく弱点が少なく、種族値的にも耐久性能が安定しているポケモンがこの型に向いている。
ここに挙げたポケモンはその代表例であるが、型を見れば分かるように、
これは初代に送ることが出来る例外系以外全てのポケモンが、技マシンで実現出来てしまう型である。
そのため、どのポケモンが突然この戦術を使って来るか分からないという恐ろしさも秘めている。
なお、ターン制限のあるルールでは、下手したらPPを使い切れず、この技を発動させる前に判定が来てしまう恐れがある。
したがって、少しでも発動を早めるため、敢えてポイントアップを使わず最小値のPPで使われることが多い。
ただし、身代わりだけは10回しか貼れないと足りない危険性があるため、少し増やしておくこともある。
オフ会ではそもそもこんな型を使うこと自体が憚られるが、それはあくまで倫理的な問題であり、
実際の強さを考えると無視出来ないというのが実情でもある。
主催側は企画段階で念のため考慮しておいた方が良いだろう。
ケンタロス:初めからこれを使う目的で積み技を積み切ってPPが切れてから全抜き
ガルーラ:初めからこれを使う目的で積み技を積み切ってPPが切れてから全抜き

・小ネタ
初代においては、ストーリー上のNPCのポケモンのPPは全て無限であった。
そのため、敵がこの技を使って来ることは一切無く、敵のPP切れを利用した低レベルクリア等のプレイは不可能と言える。
その代わり、これを逆利用して、ネコに小判しか覚えていないミュウツーを敵のメタモンに変身させ、
カンストするまで永久に金稼ぎをするという小技などが存在した。


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